皆様は、アイスランドにある「カウプシング銀行」をご存じでしょうか？
金融業界に長くいる人であれば、「懐かしい！」と感じるかもしれません。
カウプシング銀行は、一時期「北欧のゴールドマン・サックス」と呼ばれ、レバレッジ取引で金融危機以前は大きな利益を上げていました。
しかしながら、2008年に金融危機が発生すると、同年10月8日にカウプシング銀行は預金の払い戻し不能状態に陥り、国有化されてしまいます。
北海道より少し大きい面積の島に人口約35万人しかいないアイスランドにおいて、カウプシング銀行が身の丈に合わないレバレッジ取引を行っていた背景には、海外からつぎ込まれていた莫大な資金がありました。
カウプシング銀行とはじめとするアイスランドの大手三行に対して、イギリスやオランダの10以上もの自治体、銀行、ヘッジファンドなどが、700億ドルもの資金を提供していました。
アイスランド・クローナ高と高金利により、海外投資家は大きな利益を得ていましたが、2008年に金融危機が勃発すると、一気に資金回収に走り、カウプシング銀行などで取り付け騒ぎにつながることになります。
今回紹介する資料「つながりすぎた世界」は、「インターネットが広がる思考感染にどう立ち向かうか」を解説しており、「銀行業のカラクリ」部分の以下フレーズが印象的でした。
「銀行業は洗練されたビジネスだが、基本はきわめて単純だ。
まず、ある程度の金利を支払う約束で預金を集める。
こうして集めた預金をより高い金利で貸し出す。
（アメリカの）連邦政府は、一口座当たり25万ドルまでは保証する。
政府はさらに一定の資本の確保を規制し、預金貸出率にも制限を加える。
加えて銀行の貸借対照表の資産の質にも目を光らせる。
通常ならば、こうした監督体制が働いているからこそ銀行は預金者に払い戻しができるのだし、融資契約も続けられる。
また預金者も、こうした規制があるからこそ安心して銀行に低利息で預金する気になる。
金融危機に先立つ2007年、信用格付機関ムーティーズはアイスランドの銀行の格付けを最上位のAAAとした。
その根拠は次のようなものだ。
・過去30～40年、銀行業界を支援している国で銀行が不履行に陥ったことは一例もない。
・アイスランドは今後も資本を調達しつづけられるであろう。
・アイスランドの三行はいずれも国内で25%以上のシェアを持っているため、大きすぎてつぶせない。」（引用終わり）
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P.S. 今回紹介した資料「つながりすぎた世界」は、金融立国を目指したアイスランドがチャレンジに直面した理由として、インターネットと金融システムに「つながりすぎた」ことをあげています。
従来は、漁業を主要産業としていたアイスランドが金融立国を夢見て、とん挫したわけですが、火山立国であることを活用して、最近は地熱発電のメッカとして改めて注目されています。
電力は地産地消が原則であるため、金融のように世界中につながることができませんが、これはアイスランドにとっては幸運なことなのかもしれませんね :-)。
＜ Mr. PDCAのボンジュール英語「不履行に陥る」 = 「default」＞
今回出てきた「不履行に陥る」の英訳は、「default」になります。
「銀行が不履行に陥ったことはほとんどない」を英語にする場合、「Banks rarely defaulted」とすればよいですね :-)。
The document "Overconnected" has a catchphrase "The Promise and Threat of the Internet" and the following phrases were impressive.
"Banking is a sophisticated business, but the basics are quite simple.
First, collect deposits with a promise to pay some interest.
Then, lend the deposits collected at a higher interest rate.
The federal government guarantees up to $ 250,000 per account.
The government also regulates the availability of certain capital and limits deposit lending rates.
In addition, the government keeps an eye on the quality of assets on the bank's balance sheet.
Banks can usually refund depositors because of such supervision, and lending contracts can continue.
Depositors are also tempted to deposit at low interest rates with confidence in banks because of these restrictions.
In 2007, prior to the financial crisis, credit rating agency Moody's rated Icelandic banks as the highest AAA.
The rationales were as follows.
・In the past 30 to 40 years, there has been no example of a bank defaulting in a country supporting the banking industry.
・Iceland will continue to raise capital.
・All three Icelandic banks have over 25% share in the country, so they are too large to be crushed.
" (Unquote)
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Overconnected: The Promise and Threat of the Internet (English Edition)
- 作者:William H. Davidow
- 出版社/メーカー: Headline
- 発売日: 2011/01/20
- メディア: Kindle版
