私は2000年代前半にニューヨークで働いていたのですが、当時は周りの同僚がマンションや一戸建てを次々と購入し、顧客の多くも不動産関連デリバティブ商品を「とにかく早く作ってくれ!」と騒いでいました。
「本で読んだ日本のバブルの再来だ。こんなことが続くわけがない。早晩大変なことになる」と私は思っていましたが、当時所属していた組織が巨額の利益を上げていたこともあって、株主、経営者、私を含めた従業員、顧客の全員が高揚感に踊っていたことを覚えています。
大学時代のある教授が、「皆が得をしている時、おかしなことを誰も変えられない。変えるインセンティブがないからだ」と言っていましたが、まさにこの時のことを指していると感じました。
私がアメリカ人の同僚に1990年前後の日本のバブル崩壊について説明をすると、「アメリカは日本のような失敗はしない。ニューエコノミーだ(懐かしい!)。過去のことを振り返ってばかりで、未来のことを考えないから日本はダメなんだ。だから、お前も早く家を買え!」の一辺倒で、誰も聞く耳を持ってくれませんでした。
「人類の歴史から学べることは、人類が歴史から学ばないこと」とはよく言ったものです。
その後、2008年に金融危機が発生し、不動産関連デリバティブ商品は値が付かなくなり、「絶対に下がらない」と言われたアメリカの不動産価格は急落しました(「絶対」という言葉を信じてはいけませんね :-)。
「皆が同じ行動をしていると同調しやすい」ということは、心理学者のソロモン・アッシュが1951年の同調実験で明らかにしています。
ただ、ニューヨーク勤務時代の私は周りの同調圧力に屈しようにも(?)、不動産を購入する経済的余裕がなかったこともあって、金融危機の影響を個人として受けることはありませんでした (この経験から、私は一生賃貸の予定です :-)。
日本振興銀行はあまり馴染みのない銀行ですが、2010年に経営危機に陥り、日本政府と預金保険機構が歴史上初めてペイオフ(一定額の預金保護)を発動したことで、当時の金融関係者の間で話題になったことを覚えています。
2010年当時、日本復興銀行の預金規模は5,800億円程度でしたが、危機を事前に回避するため、日本政府はペイオフを発動したことになります。
不思議なことに、危機を事前に回避した場合、誰もそのことを覚えていないという特徴があります。
政府が金融機関を救済する場合、「銀行だけを特別扱いにするのか?」という感情論が各方面から出てきがちです。
1992年に宮澤元首相が、「公的資金で不良債権を処理することが必要」と考えていたにもかかわらず、内外からの反対にあって実現しなかったことはよく知られています。
日本政府による銀行への公的資金投入が遅れたことによって、1997年の金融危機を引き起こすことになり、結局この問題の解決は、2005年まで待たなければならなくなりました。
「危機を事前に回避した人は英雄になれない」と言われますが、英雄になれないと分かっていても、危機を事前に回避できるビジネス・パーソンになりたいものですね :-)。
それでは、本日もPDCAを回して行きましょう!
日本の場合、不良債権問題の解決に約15年の時間を費やしましたが、アメリカは2009年に株価が上昇を始め、2015年には政策金利が引き上げられる等、回復のスピードが日本よりも早かったことは確かでしょう。
ただ、アメリカ政府が2008年にリーマン・ブラザーズを救済しなかったことは、「大きな失政」だったことが大方の一致した見解になっています。
金融危機の別名にもなっている「リーマン・ショック(2008年9月15日のリーマン・ブラザーズ破綻)」がなければ、「昨日(2019年8月1日)のFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げの判断も変わっていたかもしれないなぁ」と、私自身が金融の世界を離れて4年が経過し、しみじみと思う夏の金曜日の朝です :-)。
I have been working in New York in the early 2000s, and my colleagues at that time have purchased condominiums and houses one by one, and many customers were asking me to provide real estate related derivative products as soon as possible.
When I explained about the collapse of Japan's bubble economy in the early 1990s, everyone said that "US is learning from Japan, we do not make the same mistake, so you also had better buy a house now!"
After that, the financial crisis occurred in 2008, and the real estate prices in the US plummeted.
It is true that we tend to tune with others when everyone is doing the same behavior, but in my New York days, I was not able to purchase real estate, because there was no enough funds fortunately.
Therefore, I was not influenced by the financial crisis as an individual basis (Due of this experience, I will never buy a house for good :-).
"If the Incubator Bank of Japan went bankrupt, the government has made up their mind to protect deposits. This policy was established as of January 2010 according to several officials.
In addition to the fact that the large-scale depositors over 10 million yen were limited, this bank did not handle clearing deposits and was not connected to the central banking networking system." (Unquote)
The Incubator Bank of Japan must be an unfamiliar bank, but it fell into crisis in 2010, and the Japanese government and the Deposit Insurance Organization protected deposits for the first time in the Japanese history.
When the government bails out financial institutions, there is a tendency for sentiment to come out from various directions that "Why are banks bailed out?"
However, it is well known that in 1992, the former Prime Minister of Japan, Kiichi Miyazawa thought that "it is necessary to inject public funds to solve bad loan issues", but it did not come true due to many opposition.
Delay of public fund infection to the financial system triggered the Japanese financial crisis in 1997, and we had to wait until 2005 by a complete solution of this problem.
It is said that "the person who avoided the crisis in advance cannot be a hero/heroin".
However, even if we can not be heroes or heroins, we would like to be business persons who can avoid the crisis in advance :-).