PDCA日記 / PDCA Diary

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PDCA日記 / Diary Vol. 459「忘れられる権利」/ "Right to be Forgotten"

English follows Japanese.

PDCA日記 Vol. 459「忘れられる権利」】
 

数年前の話ですが、前科がある人の「忘れられる権利」についての議論がありました。

 

インターネット上では犯罪歴の記載が残っており、前科がある人の「忘れられる権利」についての扱いが焦点になったわけです。

 

日本の最高裁は、社会的関心の高い犯罪について、インターネットに記載が残っていることは妥当という判断を下しています。

 

インターネット上にある犯罪などの履歴は、デジタル・タトゥーと呼ばれ、各国で様々な見解があります。

 

欧州では、「忘れられる権利」を認める考えが強いようです。

 

アメリカの場合、前科者の「忘れられる権利」よりも、社会の知る権利を優先しています。

 

今回紹介する資料「デジタル・タトゥー:インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル」は、デジタル・タトゥーをテーマにした8つの短編小説を掲載しています。

 

本書の内容は全てフィクションですが、どの事件を指しているかはある程度想定できるため、デジタル・タトゥーにお悩みの方とって、ケースとして参考になるでしょう。

 

今回紹介する資料「デジタル・タトゥー:インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル」の筆者が、エンジニア出身の弁護士であり、技術と法律に詳しい専門家による解説であるため、内容に説得力があります。

 

本書の「5年前の痴漢で再就職できない元教員」部分は非常に生々しく、匿名インターネット投稿版に記載されている内容を消去する手続きなどが、具体的に掲載されています。

 

個人と法人の場合、デジタル・タトゥーを消去するためのプロセスが異なることなど、今回紹介する資料「デジタル・タトゥー:インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル」を読んでみて、初めて知ったことも多くありました。

 

本書は、IT関連の教養が身に付くだけではなく、小説としても楽しめる良書です :-)。

 

最近はオンライン上の誹謗中傷に対して、当局が厳しく取り締まる傾向にあります。

 

誹謗中傷により命を絶つ人が出てきており、社会的な背景から当局による対応にも変化が見られます。

 

この点はデジタル・タトゥーと同じく、言論の自由とのバランスが求められるため、時代や状況により判断が変化するものなのでしょう。

 

ただ、オンライン上で他の人を傷つける行為は誰も得をしません。

 

インターネット上で他人を誹謗中傷をする暇があったら、散歩やヨガをする方がよっぽど生産的であると私は思いますけれどね。

 

また、国や地域によっては、特定の前科者にGPSを取り付けて監視する制度が採用されています。

 

GPS監視の対象は性犯罪であることが多く、アメリカの半分以上の州、フランス、イギリス、ドイツ、カナダ、韓国などで導入されています。

 

日本でも、性犯罪者に対するGPS監視が議論されることはありますが、導入には至っていません。

 

世界中どこでもそうですが、性犯罪は再犯率が高いことが確認されています。

 

自民党の政治家がGPS監視を主張することはありますが、日本で議論が拡大する様子は、現時点ではなさそうです。

 

それでは、本日もPDCAを回して行きましょう!   

 

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デジタル・タトゥー──インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル

デジタル・タトゥー──インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル

  • 作者:河瀬 季
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

P.S. 今回紹介する資料「デジタル・タトゥー:インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル」の著者である河瀬季(かわせとき)氏は、元ITエンジニアの弁護士です。

 

最近は、日本でも社会経験を積んでから法科大学院に入り、法曹を目指す人が出てきていますね。

 

これは良い傾向であると感じていますが、日本の法科大学院制度は色々な意味で問題が指摘されています。

 

日本の場合、司法試験を受験するためには、法科大学院を卒業するか、予備試験に合格する必要があります。

 

法科大学院は分かりやすいと思いますが、予備試験の存在は余り知られていません。

 

法科大学院制度の導入に伴い、経済的な事情などにより学校に通えない人が司法試験を受けられるよう、2011年から導入されたのが、予備試験です。

 

予備試験に合格すれば、法科大学院卒業者と同様の学力保持者として認められ、司法試験の受験資格を取得できます。

 

法科大学院に入るためには大学卒業資格が必要ですが、予備試験の受験資格に年齢や学歴などの制限はありません。

 

つまり、幼稚園児であっても、受験料を払えば予備試験を受けることができるのです。

 

2017年の予備試験では、18歳の高校3年生が合格し、法曹界で話題になりました。

 

また、この人は大学1年生だった2018年、司法試験にも合格しています。

 

予備試験について、「法科大学院制度を揺るがすもの」という批判があります。

 

一方で、「大学や法科大学院に進学できない人が法曹を目指す唯一の方法」と予備試験を擁護する考えもあります。

 

私は仕事の関係上、弁護士と話をすることがあります。

 

法科大学院出身者よりも予備試験合格者の方が優秀」とコメントする弁護士もいます。


合格率4%前後の予備試験をくぐり抜けた人の方が、仕事探しの観点からも有利に働いている側面があるようです。

 

日本の法科大学院に入る場合、既習コース(2年)と未習コース(3年)を選ぶ仕組みになっています。

 

法学部卒業者など、一定の法務知識を有している人は既習コースに入り、法律に余り関わりがなかった人は未習コースを選択することが、一般的です。

 

ただ、この仕組みは分かりにくさがあり、2004年に法科大学院制度が始まった時から色々な声が上がっていたようです。

 

ちなみに、アメリカには大学の学部に法学部が存在していません(学部の医学部もないです)。

 

そのため、アメリカで法曹を目指す場合、大学を卒業した上で(学部は何でもよい)、法科大学院を経て、司法試験を突破する必要があります。

 

韓国も、2007年に法科大学院制度を導入しました(正式名称は、「法学専門大学院」)。

 

韓国で法科大学院制度が採用された背景には、日本と同じく「多様なバックグラウンドを持つ人材を法曹として養成する」という目的がありました。

 

ただ、日本とは違い、韓国は法科大学院導入に伴い、大学学部における法学部を廃止しました。

 

そのため、韓国の法科大学院には未習コース、既習コースという分類はないわけです。

 

日本の場合、大学学部に法学部を残す形で法科大学院制度を始めたため、色々な意味で複雑な形になっているわけですね。

 

日本の法科大学院は2011年まで75校ありましたが、2020年現在はピーク時の半数以下の35校まで減少しています。

 

法科大学院の数が大幅に減った背景には、入学志願者が増えなかったことに加えて、司法試験合格率が想定よりも上昇しなかったことなどが挙げられています。

 

過去のPDCA日記で紹介した名著「道徳感情論」でアダムスミスは、「政府に近づくほど、ビジネスは非効率になる」という名言を残しました。

 

2004年に日本で法科大学院制度が始まった際、「ビジネスになる」と思った多くの大学が、法科大学院を設置しました。

 

それから15年以上が経過しましたが、法科大学院の数は減少し続けています。

 

文部科学省が主導した日本の法科大学院についても、アダム・スミスの「政府に近づくほど、ビジネスは非効率になる」という名言が、当てはまるのかもしれませんね :-)。

 

道徳感情論 (日経BPクラシックス)

道徳感情論 (日経BPクラシックス)

 

 

< Mr. PDCAのボンジュール英語「説得力がある」=「convincing」>

  

今回出てきた「説得力がある」の英訳は、「convincing」になります。

 

「彼女の話は説得力があった」を英語にする場合、「Her story was convincing」とすればよいですね :-)。

 

デジタル・タトゥー──インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル

デジタル・タトゥー──インターネット誹謗中傷・風評被害事件ファイル

  • 作者:河瀬 季
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

PDCA (plan-do-check-action) Diary Vol. 459 "Right to be Forgotten"】

 

The content of the material "Digital Tattoo: Internet Slandering / Rumor Damage Case File (Japanese only)" is convincing, because it was wrritten by a lawyer and an engineer.

 

In this book, the part "Former teacher who cannot be re-employed due to molestation 5 years ago" is very vivid, and the procedure for erasing the contents described in the anonymous Internet posting version is described in detail.

 

For individuals and corporations, the process for erasing digital tattoos is different.

 

There are many things that I learned for the first time after reading this material.

 

Let's function PDCA today!   

 

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